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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年9月17日付
こちら情報局

マトリックス

 新作映画は海外出張中の機内か週末早朝と決めている。

 元々人混みの中で何かをすることが嫌いで、大勢の人と同じ心理状態に駆り出される事が苦手な性分であるためだ。企業側が設定した「大衆心理」と違うことをする方が得した気分になれるのだが、その分リスクも決して低くない。

 というのは、せっかくの休日に「早起きは三文の得」などと思って朝8時の上映時間に間に合わせ必死に映画館に行っても、予想以上に現場が混雑し、「なんだ同じ考えの人はたくさんいるではないか」「もっと寝ておけば良かった」と反省しきりになるからだ(笑い)。

 さて、日本で公開されたばかりの映画「マトリックス」を見た。映画の舞台は2199年の地球。

 コンピュータに支配され、人々はバーチャルに映し出された「1999年的なイメージ」の中での生活を送る。コンピュータ・プログラマであり、ハッカーでもある主人公は直感的にこれが「作られた世界」と気づき、彼を現実の世界に導いた「レジスタンス」とともに、やがて「支配者」と「その手下」に立ち向かう.....。

 コンピュータ・グラフィックス技術が次の段階に到達したという前評判通り、大きな画面いっぱいに「無限の可能性」が拡がる。

 面白いのは、脚本を含め、アジア的要素を色濃く反映していることだ。漫画「アキラ」の影響と思われるシーンが数多く登場し、香港映画界の振付師から指導を受けた「ブルースリー」的なファイトシーンが懐かしい。

 ストーリーに引き込まれ、さぁこれからという所で閉幕。持ち越された「秘密」も多く、続編が期待される。監督やキャストなどのクレジットに混ざり「看護婦」の文字があったが、映画を演じたのは生身の人間であり、生傷が絶えなかったのかとホッとさせられた。