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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年7月16日付
こちら情報局

搭乗券の大きさ

 さて、今週も出張中の出来事から題材を取り上げた。

 ネットワークの時代を迎え、多くの企業では、システム導入による作業の効率化と顧客満足の最大化を解決すべく様々な試みが行われている。

 例えば搭乗券の自動チェックイン機。エアライン各社はたぶんに多くの資金を投入し、スタッフを貼り付けることで、チェックインの利便性を訴えているが、導入効果は遅々として現れない。

 一度羽田空港のチェックインカウンターを覗けば解るが、延々と有人窓口に並ぶ顧客の列の横に、これでもかと最新鋭自動チェックイン機がずらっと無機質に並んでいる。

 これらシステムは残念ながらフル稼働にはほど遠い状況にある。むしろ自動チェックインを利用する顧客は珍しい方であり、多くは待ち受ける担当者に促され、代わりに操作をしてもらい、「自動化」の実績が積み上げられている。

 システムを導入せずに、早期退職させた多くの社員を窓口で対応させた方がはるかに人間的であり、日本的経営の良さからすれば、なんだか虚しい話である。

 もちろん全ての顧客を想定しての話ではなく、チェックイン以外にも様々なメリットが存在するからこその「自動化」なのだろうが、インターネットに関する専門書を上梓した筆者でさえ敬遠する「システムの利便性」とは何かを早急に再考することを薦めたい。

 回りくどい表現をして恐縮だが、搭乗券の大きさを定期券サイズにしない限り、多くのビジネスマンと小さな子供を連れたお母さんは、落とさないようにと、二つ折りにし、ポケットにしまう動作を繰り返す。折り目のついた搭乗券を機械は受け付けてくれず、案内係員は人の操作を必要とする窓口をひたすら指さすだけだ。