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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年6月11日付
こちら情報局

女子学生就職事情

 今年の大学生の就職活動は昨年にも増して厳しい状況が続いているが、こんな話が舞い込んで来たのでご紹介するとともに、各社の人事担当役員は、どうか自社に該当する事例であるかどうかを再度確認し、早急に改善を願いたい。

 某企業での出来事。都内のあるホテルのフロアを借り切って面接会場にしたらしい。就職希望の女子学生が受付に行くと、「何号室」と言われ、直接その部屋に行くよう指示された。

 部屋に到着すると、30歳くらいの面接官とおぼしき男性社員が、ベッドの隣りで待ちかまえていたため、とっさに女子学生は「部屋の入口のドア」を開けっ放しにしてもらうように頼んだそうだ。

 しかし、その男性社員は「閉める」ことが規則だからと入口のドアを強引に閉めようとし、結局押し問答になり、面接を受けるまでもなく学生はホテルを退散、その企業への就職活動を終了した。

 その後、その女子学生はマスコミの内々定を獲得したが、当然ホテル面接を敢行した某企業への不信感でいっぱいだ。もしかすると数年後にその業界を担当し、人事採用のことで、当該企業を取材し、記事で告発するかもしれない。

 この話、もちろん実話であり、業種やその後採用となった企業名等は、いたずらに第二の被害が及ばないよう伏せさせて頂いている。 効率よい採用を目指す意味で、ホテルの空間を借りた面接には文句はないが、「ベッドを片づけ、入口のドアを少し開ける」か「スイートを借り、寝室は使わない」等の配慮が当然の礼儀である。

 仮になんらやましいことがなくとも、双方が密室で不正行為がないようにするのは、公平な採用活動への第一歩である。

 売り手市場とか買い手市場という前に、将来を担う若者の社会への第一歩に配慮したいものだ。