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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年5月7日付
こちら情報局

訪米と訪中

 小渕首相の訪米は、気配り首相らしく可もなく不可もなく終了した。シカゴでの始球式では、捕手を務めたサミー・ソーサ選手のミットにノーバウンドで収まり、どうにか面目を保っている。

 しかし、何故シカゴだったのか。ソーサ選手の人気にあやかりたいのも無理はないが、クリントン大統領同様ケネディ大統領に憧れたのであれば、ダラスを訪れるのも一計だ。或いは、大リーグでの活躍で多くの日本人に誇りと希望を与えた野茂選手が再起を目指して孤軍奮闘中なのだから、激励のためにキャンプ地を訪れることも可能であったはずだ。

 さて、小渕首相であるが、誉めてもらおうと慌てて終わらせた宿題(ガイドライン)を誉めてもらえず、むしろ米国に配慮しておっかなびっくりだった沖縄でのサミット開催でお褒めの言葉を頂戴した。

 結局、米国の最大の注文は内需であり、景気回復であったわけだが、その意味では、クリントン大統領からは、『何しに米国に来た、日本国内でやることをやってから、遊びに来たらどうか』と言われているようなものだ。

 同じ時期、政権交代可能な健全野党を目指す民主党は、菅代表が訪中。江沢民主席との対談を実現し、野党第一党の面目を保った。

 が、ガイドライン成立直後でもあり、中国側の文句のはけ口にされるであろう最悪のタイミングであったことは自明である。

 恐らく民主党は、自由党党首の小沢氏が会えなかった中国の最高指導者に会えたことを最大の功績だと見なしたのではないか。或いは、ガイドライン成立での中国の苛立ちを国内に伝え、潜在リスクを間接的に伝えようとしたのか。

 政権奪取を目指すならば国内問題で勝負する良いチャンスなのだが、こちらも古典的な戦術を踏襲している。