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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年4月2日付
こちら情報局

甲子園

 筆者の自宅の近所にある駒沢大学付属高校が甲子園に出場した。

 住宅街の一角にある同校は初出場なのだが、近くの商店街から少し離れており、盛り上がりにかけるかなぁと思っていた。

 しかし、これは杞憂に終わった。出場が決まってから、学校正門に続く小さな交差点の横断歩道には、前々から決まっていたのか、急遽ご褒美にだったのか、しっかり歩行者用の信号が付けられている。

 運転手のマナーが年々悪化し、横断歩道では止まってくれるようなことが希になっていたため、地元住民としては大歓迎である。

 一回戦当日。静まり返るご近所をよそに、年度末の休日出勤を余儀なくされた筆者は、試合を見るどころではなかったが、初戦突破のニュースにひとまず喜んだ。

 その後の二回戦は、白熱したシーソーゲームの末、惜しくも敗れたものの、選手の健闘を讃えたい。

 さて、甲子園出場を決めた球児達を応援するために在校生が大型バスをチャーターし、移動する光景は風物詩となっているが、出場校の苦労話を少々。

 とある高校の場合。ここは、甲子園まで5時間もあれば着いてしまう。第二試合への出場が決まったが、実際には前日の午後十時半に学校を出発。気合いの入れすぎではと心配したが、どうやら別の理由が存在するようだ。

 なんと県の青少年条例で夜の十一時から朝の四時半まで、外出を禁止しているためらしい。結局、狭い甲子園の駐車場にも入れず、夜明け前から朝の九時まで別途しかるべき駐車場にて待機するのだ。

 同じことは第四試合にも適用される。夜の十一時までに学校に戻れないのであれば、しかるべき場所で時間をつぶし、朝の四時半を待って、生徒をバスから降ろすらしい。条例の主旨である健全な青少年の育成とかけ離れていまいか。