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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
99年2月26日付
こちら情報局

新卒採用見送り

 少し前の話で恐縮だが、今月の四日に、全日本空輸が2000年度のスチュワーデスの新卒採用を見送ると発表した。航空大手3社の中で新卒採用の見送りを発表したのは同社が初めてであるものの、他2社が追従しないとは断定できない。

 全日空の場合は、契約制スチュワーデスを導入した95年度以降、年間700人以上を採用、ピーク時には、千人弱に達していたと言われ、女子学生就職難の昨今、その影響は大きい。

 そういえば、今年の4月以降、改正男女雇用機会均等法が施行され、求人上は男性のみや女性のみの募集が禁止される。それでも看護婦や保母とともにスチュワーデスを希望する女子学生は少なくない。

 さて、冒頭のスチュワーデス採用問題であるが、バブル期の証券会社ではあるまいし、前年まで暫く採用ゼロの年が続いた後、いきなり数百人単位での採用を復活させたりと騒々しい。後々の影響を考慮し、もう少し慎重に出来なかったのかと言いたい。

 今回の採用中止の影響は「ゲームの理論」に従えば、2倍になって跳ね返ってくると計算できる。一部の学生は他業種など振り向きもせず、当然競合先へと集中し、なだれ込むからだ。

 この手の話、何も航空会社に限ったことではない。今年に入って、不景気だからと新卒採用の中止を決定し、これからは中途採用のみに特化するぞと高らかに宣言する企業が相次いでいるが、これで本当に良いのだろうか。

 人事採用は安定してこそ、優秀な人材を確保できる。仮に10人の採用を考えたとしても、3年に渡って3人程度ずつ獲得する場合と最初の1年で10人全員を獲得するのとでは、確率的に前者の方がより優秀な人材を採用できるというものだ。