トップへ


こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年10月30日付
こちら情報局

ニューヨーク

 三年ぶりに訪れた国際都市ニューヨークは、好調な経済に支えられ、すっかり自信を取り戻していた。そんな彼の地で見つけた話題を少々。

 ブームの兆し大なのが、大皿式でお総菜をチョイスできるテークアウト専門店。日本で言えば大手町にあたる場所に出現した「サラダ・バー」は、計り売りを基本とする。

 良くあるバイキングの食べ放題とは異なり、重さで勝負。道理で大食いのニューヨーカーも行儀が良く、程々に分量を抑えていた。 そんなためか、初めて当店を訪れる初心者は一目瞭然。意欲満々に大盛りでレジに向かい、請求される金額を聞くや否や、泣きっ面で財布とご相談と相成る。

 このサラダ・バー、サラダとは名ばかりで、野菜類に混ざり、中華風団子やマカロニ・グラタン、唐揚げチキンなどかなりのお総菜をチョイスできる。さらに本格的なランチにしようと思えば、別コーナーの「モンゴル鉄板焼き」なるものにて、生肉や冷凍シーフードをヌードルやライスと共に炒めてもらうことも可能だ。

 このモンゴル鉄板焼きシステム、近い将来間違いなく日本に上陸することになろう。コック2人が対面上に位置し、腰高ぐらいの直径2メートルの円柱の周囲を一方向に向かって移動しながら、それぞれ預かった素材を棒の様なヘラで転がし、鉄板上を一周させると火が通る仕組みになっている。

 適度な大きさにスライスされた冷凍素材といい、一回転で調理が完成する単純さといい、国際都市ならではの斬新な発想にいたく感激した。専門家を必要としない「ビジネス・システム」を構築することが、価格競争でのコスト削減の原点であると再確認する瞬間でもある。そうそう、炒める行為自体がショービジネスとしての一面を満たすことも魅力である。