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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
98年5月8日付
こちら情報局

就職活動

 学生諸君は就職活動の真っ只中。そろそろ同級生の就職先が決定し、自らは理想を追求すべきか、現実的に妥協すべきかを悩む時期に差し掛かる。結論から言えば、日本企業は過渡期の時代を迎え、やり直しの効く人生に向け大きく変革しようとしている。一生の選択として必死に狭き門をくぐらなくても、何処かで努力した分だけ報われる時代が到来するのであって、そんなに焦ることはない。採用担当者の心地よい言葉に酔いしれることなく、分相応の企業で一歩一歩地道に積み上げていく努力をされてはどうかと提案したい。

 そういえば、筆者などは戦後民主主義教育から言えば、企業戦士として世に出せるような標準的な学生生活を送っておらず、博士課程を志半ばで挫折してから一変、就職に向けてのいい加減な活動を開始したツワモノである。新聞の求人欄で最も大きなスペースを占める会社が採用に意欲的であろうと前職の証券系経済研究所に中途入社してから十数年が経過した。 現職である当シンクタンク発足時にも、既に応募ではかなり出遅れ、面倒だから面接は一日で済ませて欲しいと証券会社を休み、一日中役員応接室で面接に来る役員の皆さんをお迎えしたことを覚えている。

 もちろん、こんな調子だから、会社生活も順風満帆ではなく、最近になってようやく時代が前衛的になり、産地直送の見栄えの悪い野菜宜しく、メディアというスーパーの軒先に並べられていると自覚している。

 希望の会社に就職出来る出来ないは、今まで生きてきた時間からすれば、天と地がひっくり返るような衝撃的な出来事であろうことは察するが、長い人生で考えるとそんなに深刻なことではない。ストレスも含め、体には気を付けてもらいたい。