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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年2月9日付
こちら情報局

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ザ・カップ

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 渋谷の東急文化村にてブータンの映画が公開されている。ブータンの監督が本物の修行僧(お坊さん)を出演させ、完成させた初の長編劇映画。サッカーのワールドカップを題材にしたものだ。

 二年前にフランスで実施されたワールドカップに、遠くブータンにいる若い修行僧らが興味を持ち、修行に身が入らなくなっていく。

 一方、亡命がこれほど長びくとは思わずに、郷愁に駆られる亡命チベット僧の長老(僧院長)らが、やがて現代に合致した修行のあり方を探り、決勝戦のテレビ観戦を承諾。若い修行僧らはテレビの調達に奔走する......。

 いつものように、週末の早朝に出かけ、早々に見てきた。観客はといえば、古き良き隣人であるアジアへのあこがれを持つ人々が大半であり、素朴さに胸打たれ、癒(いやし)をもたらしてくれたことを絶賛。劇場を後にしている。

 勿論、映画自体はそれほど単純なものではなく、なぜ亡命しなければならなかったのか、チベットの現状はどうなっているのかを考えさせる題材でもある。

 但し、それは映画を楽しむそれぞれの観客が感じることだから、これ以上の指摘は野暮と考える。

 実は映画を見て、気にかかることを思い出した。日韓共催で行われるワールドカップの名称である「コリア・ジャパン」を巡る日韓の軋轢だ。

 日本側がチケットの国内販売に際し、「韓・日」ではなく「日・韓」としようとしているとして韓国側が抗議していたのだ。

 結局、日本側は入場券申込用紙の印刷を間に合わすために表記抜きにしたようだが、関係者は是非一度「ザ・カップ」でも見て、心の広さを取り戻したらどうか。それがアジアのリーダーとしての風格であり、隣人からの尊敬を受ける原点にもなる。