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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年6月30日付
こちら情報局

寝ちゃダメ

 選挙当日の早朝、映画「グラディエーター」を見ることにした。予報では夕方には雨が上がるというので、投票場の様子はその頃観察することにし、それまでは封切り直後の映画を堪能することにした。

 映画は、ローマの拳闘士の物語である。年老いた皇帝(シーザー)が自らの息子ではなく、軍隊を統率していた誠実で勇敢な将軍に皇帝の地位を継がせようとしたため、嫉妬した皇帝の息子に陥れられ、奴隷となる。そこから拳闘士として這いあがりローマに凱旋するストーリーだ。

 今回の選挙でも、映画同様迫力あるシーンが展開された。都知事選で破れた柿沢弘治代議士が地元の応援をバックに見事復帰を果たし、自公保の選挙協力でのゴタゴタから無所属で立候補した森田健作代議士が当選した。

 闘い終わって、日が暮れて。開票は深夜にまで及び、テレビ討論会で夜更かしをした人も少なくない。それでも政権交替には至らず、不祥事で起訴されている先生が地元で余裕の当選を果たし、みそぎは済んだといいたげな表情に、徒労感がある方もいることだろう。

 が、小選挙区制は、各政党がそれぞれの選挙区で立候補者を立てて育てあげ、一つ一つひっくり返さねばならず、もう暫く時間が必要なことを肝に命じたい。

 この話、別に民主党の肩を持つわけでも、自民党の体質が嫌いといっているわけでもない。二大保守の誕生が間近であることと、政治浄化には不可欠なプロセスであることの再確認をしたいだけだ。

 それでも、もう次の選挙には行かないとがっかりしているあなた。そういう問題意識を持つあなたにこそ、是非次回も投票をお願いしたい。

 まともな社会を作るための投票こそが、選挙権のない外国人の私にとっても、貴重な一票となる。