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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年4月28日付
こちら情報局

陳水扁次期総統

 先週一週間の日程で台湾への取材に出かけた。

 旅の目的は次期総統に当選した陳水扁氏の実力を探ることと、従来通りの経済発展が見込めるのか、同国の近況を含め選挙後の微妙な変化を再度調査することだ。

 国家の定義を巡っては、一ヶ月後の五月二十日に予定される次期総統による就任式当日の演説が注目されており、中国側からの要求はきびしさを増している。

 が、取材中に特に感じたことは、若干四十九歳の彼への台湾政財界重鎮の信頼の厚さである。

 民主化を示唆するおおらかさはテレビ番組に如実に現れる。

 一番の人気は陳水扁氏と李登輝総統にそっくりの漫才師二人が政治風刺を効かせてギリギリの掛け漫才をする番組だ。

 独特のアクセント(台湾国語)をしっかり真似し、当事者ならばいやだろうなと思うのだが、圧力がかかることも放送禁止になることもなく番組は延々と続いている。

 さて、そんな台湾の実力を思い知らされたのは、新竹の科学園区に出向いた時のこと。当初予定していたインタビュー先が当方の取材に対応する適任者でないことを相手側が気づくや否や、携帯電話で連絡して新たな取材先を紹介し、現場まで車で送ってくれた。

 さすが本場米国シリコンバレーのカウンター・パートとしての機動力を自負するだけはある。

 自らのパフォーマンスに直結しなくとも、いつか自分のところに利益の一部が還元されるとの確信があるからだ。ネットワーク経済を遂行し、外部のスキルを吸収する組織の柔軟性には舌を巻く。

 高雄では半年前に開業した八十五階建ての高層ホテルに宿泊し、シカゴのような夜景を堪能した。

 中継貿易で鳴らした高雄港も三通解禁を前にソフトインフラの再構築による体質改善に忙しい。