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こちら情報局


「本音のコラム」
『東京新聞』
00年1月7日付
こちら情報局


 今年は辰年。「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」である。

 「龍」というのは空想上の動物とされる。空を駆けめぐり、火を吹くイメージが強く、「龍」にまつわる物語は数多い。例えば「ネバー・エンディング・ストーリー」では主人公が成長していく過程で、要所要所で助けてくれる知恵袋であり、参謀の役割を果たした。

 さて、日本の龍は誰かと考えてみれば、橋本龍太郎前首相に龍の字がつくぞと閃いた。さぞかし、政権を続投し2000年を迎えたかっただろうと心中を推察する。

 が、先月中旬、一年数カ月ぶりにメディアに登場した彼のコメントを聞く限り、「うーむ、ちょっと説教臭いなぁ」「それは筋論だが、国民がついてくるかなぁ」と考えさせられた。

 これならば、ノホホンとした我らが小渕首相の方が「ムードメーカーとしてはましだ」と妙に納得させられるものがある。

 その小渕さんは、あれだけ「龍」ちゃんが苦労していた沖縄問題に淡々と接している。が、淡々としている割には、ちゃっかりサミット開催を沖縄に決定し、アジアへの気配りを忘れず、普天間移設と北部振興策を一歩前進させた。

 但し、第二話は波乱万丈だ。国会冒頭での混乱が予想され、どのタイミングで解散総選挙になだれ込むか、政局から目が離せない。

 次に「竜」と言えば竜宮城。助けた亀に連れられて、海の中のハーレムで散々遊んで歓待を受けた浦島太郎が、最後にもらったお土産の玉手箱を開けたら、爺さんになってしまったという話である。

 九十年以降、バブルが弾けていく過程を振り返ると、既に十年が経過している。あれから十年、全員が十歳老けてしまった。もしかして、私達全員がバブルという玉手箱を開けてしまったのだろうか。

 同じ状況で、八七年にニューヨーク市場がクラッシュし「ブラックマンデー」を経験した米国は、日本的経営の良さを学び、ネットビジネスを開花させた。九七年十月十九日の新聞広告に某投資銀行が「10 YEARS AFTER」なるメッセージを掲載し、アメリカ国民の十年間の努力と今日の米国経済の再生を称えている。

 私達も是非、ミレニアムの今年、バブル後遺症に決着をつけ、来年の元旦に元気なメッセージを出せるようにしたいものである。

 三つ目のドラゴンは、NIEs。香港、シンガポール、韓国、台湾。九七年に香港が返還され、昨年マカオも戻ったので、中国としては台湾と統一に向けた話し合いを始めたいところである。

 その台湾では、前回の九六年に総統の直接選挙が実現し、今年三月の次期総統選に焦点が集まっている。

 「まぁ、隣の国だから、関係ないや」と言う無かれ。世界のパソコン関連の部品の七割を台湾で生産していることから、「台湾中部大規模地震」発生直後にはニューヨーク証券市場の株価を下落させた。それほど台湾の情報通信産業は、世界経済に関与している。

 隣国日本としては、中国と台湾の政治外交上のイデオロギー云々とは別に、台湾の安全保障なり、経済活動が円滑に行われることに注意と関心を示すことが重要だ。

 さて最後に四つ目の「ドラゴン」の話をしたい。「中日ドラゴンズ」のことかと思ったあなた、はずれ。「ドラゴン・アッシュ」である。日本のヒップホップなんて本場米国を越えることはないと高をくくっていたら、日本語の歌詞であれだけの説得力を持つ次世代が登場した。ワクワクさせられると同時に、日本にも第三次(サービス)産業での付加価値が存在するではないかと安心したりもする。日本の若者よ、勇気と希望と自信をもって、明日を目指しても大丈夫だ。