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こちら情報局


「言いたい放談」
『東京新聞』
03年08月01日付
こちら情報局

災害広報と報道姿勢

 宮城県を襲った直下型地震は、震源地が浅く、前震、本震、余震ともに震度6というすさまじいものであった。
 
 筆者は、「現代リスクの基礎知識」なるコラムをネット上で展開していることもあり、災害広報という立場での公共放送のあり方を検証しながら事態の推移を見守った。
 
 未明に発生した前震の時には、アナウンサーがイヤホンをつける場面から始まり、突発的な出来事にも慣れた様子。
 
 ところが、翌朝に本震が、それも全国放送中に発生し、現場からの中継に混乱が生じていた。未明のことを聞こうとしていたのに、今現在の被災地の情報を聞き出さなくてはならなくなったからだ。
 
 アナウンサーは、電話口の向こうで対応している町役場の職員に次々と質問を投げかけるが、すぐに答えられない状況に、イライラ感が伝わってくる。
 
 そんなNHKの完全主義は体感済みだ。筆者が解説者として出演した30分番組では、録画であるにも関わらず、エンディングが5秒ほど短かったために、番組の冒頭からやり直しを行ったことがある。
 
 途中に流れる取材テープも、あとで挿入するのではなく出演者もスタジオで見るという、生放送に近い演出を心がけていた。そんな生真面目さはテレビ放送の初期からの伝統でもあり、現場のこだわりだろうと、無理難題に付き合っている。
 
 しかし、災害報道はそれでは困る。現場が停電していたり、ロッカーが全て倒れていたり、役場内の備え付けのテレビが機能しない。そうしたなか、被災地以外の「茶の間」の方が鮮度の良い情報を得られるのは、当たり前のことであり、むしろそのあたりをフォローして、被災地に配慮することが大事だ。
 
 もし、リスクマネジメント体制の不備が現場のドタバタに繋がっているという先入観で、こうした取材をしているならばもっての外。電話しているこちらは邪魔者であり、二次被害を拡大しているかもしれない。
 
 このあたり、報道と広報の違いを見極め、災害時の広報としての機能を公共放送がどうサポートするか、専門家を交えた議論、機能抽出が望まれる。