【書籍】「パナソニック人事抗争史」

 5.松下本

「パナソニック人事抗争史」岩瀬達哉 / 講談社/2015年4月1日第1刷発行/1380円(税別)

 

岩瀬達哉さんの本なので、速攻で購入。

週刊現代の連載と追加取材からなる。

実名飛び交う。

あとがきの「そういうことだったのか」。まさに。そういうことだったのかぁ。

 

 

松下幸之助さん(創業者)の娘婿の正治さん(2代目社長)と、

改革派の山下俊彦(3代目社長)、さらに改革を続けた谷井昭雄(4代目社長)。

谷井社長の下に居た4副社長。彼らの退任。

松下家の忠臣。イエスマンの森下洋一(5代目社長)。

V字型カッターの中村邦夫(6代目社長)。

プラズマをさらに推進してしまった大坪文雄(7代目社長)。

ようやく、大政奉還を果たしたのか。津賀一宏(8代目社長)が就任したのは、2012年6月。

 

まるどめ(5代目)、プロサラリーマン(6代目)、イタコナ(7代目)。

 

冒頭の「山の上ホテル事件」から、一気に引き込まれる。MCAの買収売却。

ああ、あのとき…。もったいなか。

 

一気に読了。

「ルーツ」という西アフリカのザンビアから米国へと向かうクンタキンテ少年からの三代の長編のドラマを想起した。

 

(追記:そういえば、この人事抗争は、ソニーのに似ている?)

(追記2:シャープの迷走は、対極の液晶で起きているので、どの選択肢が正しかったのかは、謎ではある)

 

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僕とパナソニック。多少の行き来がある。

松下電器の本社には、98年だったか、招かれ、IT戦略などの話をしたことがある。

東洋経済で、「インターネット企業戦略」(1998年)を上梓した直後である。

当時は、ネットとか、ホームページとか、コミュニティの話をした。

その後、数回通い、なんどか、役員に経営戦略、事業戦略の話も、踏み込んで。意見交換した。

 

(長い廊下の先にある役員食堂は、とても質素で、さすが松下幸之助と、大変感銘を受けた)

(それに輪をかけ、質素だったのは、近くにあった「三洋電機」でした)

 

松下電器とパナソニックと、ナショナルと。それらブランドの統一、

出来たらパナソニックを使いましょうみたいな話もしたと思う。

(当時は、正幸氏が副社長に就任し、どうするかくすぶっていた)

僕的には、創業家へ誰が鈴を付けるかに興味があった。

 

当時は、経理の松下と思っていたが、この本を読んで、もっと複雑だったことが解る。

某戦略部門への提案は、動く様子もなく、その後、官庁向けの別プロジェクトが多忙になり、疎遠に。

(本を読んで、行間を類推。そうだったのかぁ…)

 

やがて、V字回復のコストカッター。

(僕には、日産のゴーンさんの写しとしか見えなかった)

旨く行くはずがないのだが、まんまカラまわる巨大組織。

 

時を経て、2008年、ようやく重い腰を上げ、パナソニックへ。三洋電機の完全子会社化。

(提案から10年が経過していた)

三洋電機を取り込んだと発表した直後、別件で、三洋のエネルギー担当の役員と意見交換したことがある。

役員は、自身は身を引く、部下(部長)が引き継ぐ。顔一つ表情を変えなかったが、その役員の背中には、怒りがにじみ出ていた。

 

もう一つ、同時に取り込んだ「松下電工」。

若い頃(金融工学に居た90年代初頭)に何度か「人工知能分野」で世話になった「松下電工」の役員(当時部長、再会時は、副社長)は、巨象に呑まれこまれながら、ものづくりの効率化(開発スピード、コスト削減、一体開発による期間短縮)などで、指導力を発揮した。

僕は、密かに、この電工の彼が次のトップに付いたら、松下も凄いのにって、思っていた…。

(そうだったのかぁ。この本を読むと、そんなことは夢のまた夢ではある)

 

パナソニックの復活(あと、ソニー)は、日本の復活でもある。

ウェアラブルで元気感が出てきたのは、津賀社長(8代目)が「普通の会社」「風通し」を意識したからかもしれない。

最近、発表された「球体の送風機 Q 」には、そういうメッセージがしたためられているのかもしれない。

あきんどの神様の、社是社訓。原点に戻り、社長、会長への「ホウレンソウ」、トップが手に取るように解る組織。風通しには気を付けたい。

 

ご参考:創風機 Q (パナソニックプレリリース、2015年4月3日)

http://news.panasonic.com/press/news/data/2015/04/jn150403-2/jn150403-2.html

 


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